interview
2025.01.20
10.
インタビューシリーズ
『FASの由縁』
FAS 研究開発マネージャー
向山 雄登
『発酵と科学』2つの知恵を携え、日々最良の品質への挑戦を続けるスキンケアブランド『FAS』。背景には、いいものづくりのために小さなこと一つひとつに妥協しない、どこまでも貪欲で、誰よりも誠実な人々の姿がありました。インタビューコンテンツ『FASの由縁(わけ)』では、ブランド創立1周年を記念するこの機会に、FASを形づくる各分野のプロフェッショナルたちの仕事現場に足を運び、一人ひとりの心に潜む思いに耳を澄ませることで、FASがなぜ生まれたのか。どんな願いが込められているのか。FASがFASである由縁(わけ)を紐解きます。
ーーーー「お客様に中途半端だったり、本物じゃないものを届けたくないんです」。時に熱く、時に楽しそうに、FASへのこだわりを語る『FAS 研究開発マネージャー 向山 雄登』。彼の言葉から、FASがFASである由縁を紐解く。
1.土づくりから製品づくりを始める
向山FASの製品には『黒米』と呼ばれる黒いお米が使われていることを、皆様ご存知でしょうか。美容液の原料である黒米は、京都府京丹後市弥栄町芋野という場所で作られています。人の知恵を用い、自然の力を最大限引き出してつくられているその黒米は、普通のお米より栄養素が高く、FAS製品の要となっています。
ーーーー妥協のない製品をつくる。そのために、大切にしている原料へのこだわりは、『黒米』をただ仕入れるのではなく、「現地に足を運び、その栽培のプロセスに関わること」だと向山は語る。
向山お客様に心から喜んでいただける製品をつくるためには、ただ効能を数字で見て、その製品の良し悪しを判断するだけでは足りません。形になるまでの過程を理解し、それぞれのステップに向き合うことで、より多くの改善を行うことが重要になっていくと考えています。だからまず、原料である黒米をつくる農家の方々と行動を共にし、その栽培に携わることから製品の改善をはじめています。小さなことから一つひとつ、こだわりぬきたいんです。
ーーーー良い黒米づくりのために必要なことは、課題の発見、改善、そして検証、そのサイクルを繰り返すこと。毎年環境が変わり続けていく黒米づくりで、一度にいろんな改善を加えず、重要ないくつかに絞って改良を行うのは、どの改良点が稲の生育にどう影響したか確認し、翌年以降にも再現できるようにするため。
向山黒米づくりの過程でより本質的な改善として今年取り組んでいるのは「土づくり」です。土の中には微生物の生態系が無数に広がり、その生態系をより良くすることが黒米の品質改善に影響を与えています。年に一度、自然を相手に改善策を考え実行する。途方もないプロセスのように思えますが、一つひとつチームのみんなで話し合い、着実に前に進んでいく過程自体がとても興味深いんです。
ーーーー「まだまだ、改善することはたくさんあります」と嬉しそうに語るその表情からは、良いものをつくるためにとことんまっすぐ向き合い、そのプロセス自体も楽しんでいる、彼の人柄が感じられる。
向山「製品をより良くしたい」その気持ちはもちろんですが、実は田んぼに伺ってお米づくりのプロフェッショナルの方々のお話を聞いて議論したり、黒米づくりの過程に携われること自体が楽しいんです。例えば、春と秋の田植えと稲刈りにチームのみんなで参加したり、毎月のように現地に足を運んでお話を聞いたり、今年は田んぼに入って除草作業を手伝ったり。農家さんと一緒に泥の中で同じ時間を過ごし、良い黒米づくりのためにまっすぐ向き合える時間も、やりがいの一つです。日々変化していく田んぼ、黒米、そしてその先でFASの製品がどんな進化を遂げていくのか、私自身も楽しみながら製品づくりに携わっています。
2.未来を変える、未知への好奇心
向山FASの製品の軸となる『黒米発酵液』が完成するまでには、いくつものプロセスが必要です。流れを少し紐解いていくと、まず京丹後で黒米を栽培し、その黒米の力を最大限引き出すために発酵を行います。発酵は、その道のプロフェッショナルである老舗麹店『秋田今野商店』にお願いしており、黒米はまず彼らのラボがある秋田県に運ばれる。秋田今野商店の創業は明治43年。100年以上の歴史の中で、少しずつ増やしていった微生物の数は、なんと一万種類以上。黒米発酵液には、その微生物の中から黒米の力をいちばん引き出すことができる『サッカロミセスベローナ』が用いられています。
ーーーー黒米の力を最大限引き出すために、FASでは発酵を2段階にわけて行う。回数を重ねることで、美容成分は多種多様に増え、さらにその美容成分の分子は細かくなっていくため、肌なじみがよく、浸透しやすく変化する。
向山発酵は最良の美容液をつくるために重要なプロセスです。FASでは、発酵の力をさらに引き出すために、科学の力を用います。一般的に、ある素材を発酵させた時に生まれる美容成分の数はおよそ50〜100。ですがFASでは、発酵の力に科学の力を掛け合わせることで、ペプチド、ポリフェノール、アミノ酸、ビタミンなど、738種もの低分子発酵由来成分が含まれる黒米発酵液の開発に成功しています。
ーーーー多くの美容成分が含まれる黒米発酵液には、まだ解明されていないが、人に有益な美容成分がおよそ1000以上も含まれているのだという。研究開発として彼が成すべき役割は、より良い製品の開発だけではなく、まだ解明されていない未知の可能性を解明し続けることも使命の一つ。
向山これまで様々な研究を、その道のプロフェッショナルの方々と取り組んできました。そんな中、今いちばん力を入れている研究は、『精密発酵』と呼ばれるものです。これまで発酵は、素材に菌を掛け合わせることによって、多種多様な成分を生み出すことを目的として行われてきました。それに対し精密発酵は、素材に菌を掛け合わせることによって「ある特定の成分をピンポイントに狙って生み出す」ことに特化した技術なんです。世の中には希少性の高い成分が多く存在します。例えば、桜の樹皮にはポリフェノールの1種であるナリンゲニンという美容に効果のあると言われている希少性の高い成分が含まれています。それを大量に手に入れようと思うと、多くの木々を伐採し、天然資源の枯渇や、環境破壊に繋がってしまう。精密発酵は、新しいものを生み出すために、何かを犠牲にしてしまう現状を変える、素晴らしい技術なんです。
ーーーーFASが挑み続ける未知への探求は、より良い製品をつくるためだけではなく、自然環境や人が折り重なる生き物の生態系を守ることへも繋がっていく。未知への好奇心が、未来を変えていく。
3. 可能性に挑み続ける
向山「ありがとう」店頭に立っていて感謝の言葉をいただいた時や、製品を通してお客様にお喜びいただけた時、真摯にものづくりに向き合ってきて、本当によかったと実感します。そしてそれと同時に「もっと良いものを届けたい」と、新たな挑戦への熱が高まっていくのを感じます。もっと良い美容液を作りたいし、そのためにさらに良い黒米が必要だし、良い黒米のためにはもっと豊かな土壌が必要だし、まだまだやることは無限にありますね(笑)だけど、それが楽しいんです。FAS 研究開発として、未知なる可能性に挑み続けます。
Profile
向山 雄登(FAS 研究開発マネージャー)
株式会社シロク専務取締役。2011年にシロクを設立し、取締役に就任。2017年から化粧品事業を立ち上げ。2023年10月に「FAS」を立ち上げ、主に研究開発やPRを担当している。