発酵科学
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2024.08.01

05.

発酵科学

わたしたちが目指すのは、あらゆる面で〝本物〟の、大人が一緒に年を重ねていきたくなるブランド。真剣にものづくりに挑む過程には、FASの想いに共感してくださった多くの方々との出会いがあります。

今回は、黒米発酵液の生みの親とも言うべき存在であり、FASの独自の研究所 Fermentation & Science Research Center(発酵科学の研究所) の所長でもある、発酵の匠 伊達朗さんに直接お話を伺います。

研究所長 伊達 朗

みなさん、はじめまして。

リサーチセンターの所長を務める伊達朗と申します。私は35年以上にわたり発酵による美肌の研究およびプレステージスキンケアブランドの研究開発に携わってきました。「日本で最初の発酵代謝液」の化粧品成分としての開発や有用性研究にも関わり、現在でも発酵科学と皮膚科学の専門家と共に研究を続けています。

日本で最初の発酵代謝液

発酵の力

まず、そもそも発酵とはどういうものかというお話から。発酵とは、乳酸菌や酵母などの微生物の働きによって、食物が変化した結果、人間にとって有益なものができることを指します。同じ現象でも、人体にとって有害なものとなる場合を、腐敗と呼んで区別しているのです。酸味があっても、体をよくするものであれば発酵。お腹を下したら、腐敗。今は当たり前に存在する発酵と腐敗という概念は、人の知恵の蓄積によって生まれたものなのです。

ところで、発酵というものの中では、具体的に何が行われているかご存知でしょうか。発酵は人間の代謝に似ています。微生物が素材と出会うことで、その栄養素を摂取し、代謝物として新たな栄養素を生成するのです。そのため、発酵の条件をコントロールすることで、目的に適った発酵代謝物を作り出すことが可能になります。

発酵液の有用性

発酵液の有用性

発酵液がいいと言われる理由は、その天然性と、人間の体に近い成分、特に有用な保湿成分を多く含む点にあります。科学的に合成された成分と比べて、発酵液は微生物が自然の代謝過程で生成するため、網羅的にバランスの取れた有用成分を供給することができます。例えば、ビタミンの種類が増えたり、タンパク質が、特定のペプチドやアミノ酸に変わったりと、発酵の過程を辿ることにより、多くの有用な成分が生まれるのです。

黒米(くろごめ)発酵液の誕生

黒米(くろごめ)発酵液の誕生

近年私が着目していたのは、黒い色素に豊富な栄養素をもつ、黒米や黒豆。特に古代米の黒米(くろごめ)はストレス耐性を持つ黒い糠(ぬか)の部位に豊富な栄養素が含まれています。さらに、硬い黒い糠(ぬか)が酵母菌に強い負荷をかけ、菌がさぼらないように働きかけることで、菌が頑張ってさらに代謝物を増やすのです。

アントシアニンという抗酸化物質が含まれている点も特徴的で、これが代謝物として新たな栄養素を生み出します。こうして選ばれた素材、優れた酵母菌、そして熟練の発酵技術によって開発されたのが黒米発酵液です。

古代米の黒米

メタボローム解析による成分分析

今回、私は黒米発酵液の成分を、メタボローム解析という最先端の分析技術を用いて分析しました。その結果、その分子構造や大きさが確認された成分の種類数はなんと、738種。この発酵液に含まれる成分は、これまでの経験にない、非常に多種多様であり、しかも多くの有用な成分、発酵科学的に意義のある有用成分が含まれていたことに、分析結果を疑うほどの衝撃を覚えました。

二段階発酵

なぜそんなにも多くの成分が発見されたのか。発酵技術について、もう少し詳しくお伝えできればと思います。世界各地にさまざまな発酵の歴史がありますが、米の発酵技術において、実は日本はトップレベルといわれています。今回の黒米発酵液を作る過程では、選りすぐりの酵母を使い、独自の二段階発酵を行いました。

1回目の発酵で、ナイアシンアミドやアミノ酸、ビタミン、ミネラルなどの成分をたくさん引き出し、2回目の発酵によって角質層への浸透をよくするための低分子化を実現しています。発酵条件を綿密にコントロールすることで、738種もの成分を含有する黒米発酵液が出来上がるのです。

二段階発酵

さらに、黒米発酵液には、ペプチド、ポリフェノール、アミノ酸、ビタミン、有機酸が含まれ、多様な栄養素が含まれていることがわかりました。特にポリフェノールが豊富に含まれている点は、非常にユニークです。

二段階発酵

黒米発酵液の魅力

黒米発酵液の成分は、まだ全てが明らかになったわけではありません。今後さらに成分数が増えるだけでなく、その有用性のメカニズムのさらなる解明や、発酵科学的な新知見も得られる可能性があります。黒米発酵液の進化と共に今後のFASの進化も楽しみです。

お付き合いいただき、ありがとうございました。

今後もお客様の肌への効果、研究を重ねていきますので、どうかご期待ください。

Profile

伊達 朗 (Fermentation & Science Research Center 研究所長)

伊達 朗 (Fermentation & Science Research Center 研究所長)

発酵美肌研究・バイオ化粧品技術開発に35年以上携わる。 外資系化粧品会社で約30年、プレステージスキンケアブランドにおける研究と技術・製品開発に従事。 その後、欧州仏製薬会社グループ会社の副社長兼サイエンティフィック・ディレクターを経て、現在はシーアイディービーテックのCEOを務める。FASとともに、発酵科学の研究所「Fermentation&Science Research Center」を立ち上げ。 京都大学大学院医学研究科で修士号取得。 工学博士(バイオ工学)・医学修士・MPH・薬学士、薬剤師。