菌に向き合い続けた110年
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2024.04.10

02.

菌に向き合い続けた110年

菌に向き合い続けた110年

FASのあらゆるプロダクトの要となっている発酵。発酵と腐敗は実は紙一重で、人々の文化や価値観が、その現象がどちらに分類されるかを決めています。人にとって便益があるものが発酵、そうでないものが腐敗と呼ばれていると思うと、何とも人間中心で少し不思議なものですが。今回は奥深い発酵の世界を、私たちの大切なパートナーである秋田今野商店の執行役員にして生産・技術部長、そしてバイオインキュベーションセンター長を務める佐藤さんにお話を伺いました。

秋田今野商店

歴史と実績、そして技術

明治43年の創業から続く秋田今野商店は、醸造界に数々の革命をもたらしてきた日本を代表する種麹メーカーのひとつ。彼らの信念はとってもシンプルで「技術が資本」ということ。抜本的な近道があるわけでは決してなく、日々菌に向き合い磨かれ続けた技術だけがものを言う微細な世界なのです。

歴史と実績、そして技術

一万種を超える菌と向き合いつづける

ここで保有している菌の数はなんと、一万種類以上。この数、多すぎてぴんとこないかもしれませんが本当に膨大な量。たしかな菌の培養技術と安全性が証明された菌株保存庫がこれを支えています。今日は、一万の選択肢の中から私たちがたどり着いた、FASの要となる菌「サッカロマイセス・ベローナ」のお話を。

一万種を超える菌と向き合いつづける

10年の歳月を経て、たどり着いた組み合わせ

サッカロミセスベローナと京都産の黒米。この組み合わせには10年以上の試行錯誤があります。この10年の間、実に300種の菌をスクリーニングして選出し、何度も何度も発酵を繰り返し、最も黒米との相性がよく美容効果の高いものを選び抜きました。微生物の働きは出会う原料によって本当にさまざまで、思いがけない新鮮な気づきの連続です。「無数の菌と黒米の、たったひとつの最適解を見つけ出すこの作業はまるでアートだ。」と佐藤さん。黒米発酵液は、白米の8倍という驚異的な栄養素を含むのは、この途方もないスクリーニングの末にたどり着いたものなのです。さらに白米と比べて、黒米の場合はアントシアニン、カルシウム、ミネラル、マグネシウムが多いことも魅力的です。

10年の歳月を経て、たどり着いた組み合わせ
佐藤さん

負荷によって力を最大限発揮する微生物

固く黒い殻に包まれた古代米である黒米は、白米と比べて発酵がとにかく難しい素材。佐藤さんは「原料の分解の難易度が高ければ高いほど、酵母に負荷がかかり、高い効果を発揮するんです。」と語ります。たとえば仕事の終わりのビールやサウナの水風呂。強い負荷がつづいた後に、一気に解放されたときってすごく気持ちいいですよね。あの多幸感、高揚感は、人も微生物も一緒なんだそう。これを、酵母に少し多めに汗をかいてもらうようなイメージだと佐藤さんは語ります。

負荷によって力を最大限発揮する微生物

微生物は常に変化する生命体で、人間のコントロール下で受動的に動くものではありません。その動きや振る舞いをじっくりと観察し理解することで、私たちは新しい価値や可能性を引き出そうとしています。培養方法、継代培養、純化技術…一見難解なこれらのプロセスには、110年の間に培った微生物とのコミュニケーションの極意が詰まっているのです。

じっくりと観察

発酵の原料となる京都産の古代米、黒米

どれだけいい菌がいい環境にあったとしても、やはり最後は米次第。一言に黒米が良いといっても、同じ銘柄の米でも風が、土が、水が、育てる人が変わればもはや全くの別人。例えば、粘土質の土で作った米と砂のような土で作った米では、品種や見た目は同じでも味が全く違います。ちょっとした風土の違いや人の気遣いの微妙な差が、発酵を重ねた末のクオリティにあまりにも大きな影響を及ぼします。FASの黒米は、京丹後のチームと一同になって、土や育て方などの根本のところから、スキンケアに最適な黒米作りのトライアンドエラーを日々重ねています。

発酵の原料となる京都産の古代米、黒米