七十二候では「桐始花結(きりはじめてはなをむすぶ)」の季節を迎えました。 夏の土用を迎えるこの時期、桐の木は早くも来年咲く花のつぼみを結びはじめます。 その様子を「花結(はなむすび)」と表現するのが、この季節を映す言葉です。 来年の花を今から静かに育みはじめる桐の姿は、季節をまたいでじっくりと進んでいく発酵のプロセスとも、どこか重なって見えます。
前置きが長くなりましたが、この「桐始花結(きりはじめてはなをむすぶ)」の頃、 FAS京都東山本店にて、季節の催し「結ぶ読書の会」を開催する運びとなりました。

FASにゆかりのある方々に桐始結花の季節にちなんで「結ぶ」をテーマに本を選んでいただいております。日本において「結ぶ」という言葉は、芸術や精神、自然、人と人とのつながりなど、多岐にわたって大切な意味を担ってきました。選書された本を通して、この言葉がもつ奥深さに思いを馳せるきっかけとなれば幸いです。
ここからは、一部抜粋して選書いただいた本を少しだけご紹介いたします。
選書のご紹介<一部抜粋>
Profile

大草直子さん ファッションエディター・スタイリスト
1972 年生まれ。東京都出身。大学卒業後、現・ハースト婦人画報社へ入社。雑誌『ヴァンテーヌ』の編集に携わった後、独立。現在は、ファッション誌、新聞、カタログを中心にエディトリアルやスタイリングをこなすかたわら、 トークイベントの出演や執筆業にも精力的に取り組む。2019年にはメディア『AMARC(アマーク)』を立ち上げ、「私らしい」をもっと楽しく、もっと楽にするために。ファッション、ビューティ、生き方のレシピを毎日お届けしている。2021年には、「AMARC magazine」を発刊。新著『見て触って向き合って 自分らしく着る 生きる』(マガジンハウス)。
<選書>
『日本の色辞典』(紫紅社)
深紫(こきむらさき)、瑠璃色(るりいろ)。日本の色のなまえがあまりに美しくて、ページを繰るだけでうっとりとします。着こなしを説明するのに、色を表現するのは避けて通れず。一言「ブラウン」と言ってしまうと通じにくいところ、「柿渋色(かきしぶいろ)」と言い換えるとイメージしやすくなります。「センスを磨くためにどうしていますか?」とよく聞かれますが、もし答えるとしたら、こうした「好き」や好奇心の積み重ねが、実を結んだのかもしれません。
Profile

佐々木要一郎 米農家・料理人・醸造家
古民家オーベルジュ「とおの屋 要」オーナーシェフ。1981年岩手県遠野市生まれ。久しく絶えていた在来米「遠野1号」を2002年より復活させ、無農薬無肥料の米作りをスタートさせる。2003年どぶろく造りをスタート。2011年1日1組限定の古民家オーベルジュ「とおの屋 要」を立ち上げ、発酵料理の提供を始める。その料理とどぶろくが評判を呼び、一般客のみならず、国内外のシェフ、ソムリエ、蔵元などが訪れ、予約の取れない宿に。
<選書>
『この星で生きる理由 』/ 佐治晴夫(アノニマ・スタジオ)
慌ただしい日常を送る毎日。一時の休憩で田の畔に腰をおろしてボ〜っとしながら身体を休める。心地よい風や森の香りが漂う自然環境。田圃作業中のふとした情景。その自然のなかにも科学の芽が潜んでいること。論理と情緒をいったりきたり、答えのない問いについて考えるきっかけとなる。
Profile

鈴木 良 ギャラリーオーナー
早稲田大学政治経済学部中退、パリ第8大学美術学科卒業。以後14年ヨーロッパに滞在し、美術、工芸、古物に触れる。2022年 京都市北区にある大正時代の民家を改修し「kankakari」を設立。主な活動は、展示の企画、空間の監修など。
<選書>
『美の考古学-古代人は何に魅せられてきたか』松木武彦 (新潮社)
「美」から見た人類史の再構成の試み。美の起源が、“無用の用”を生み出すヒト固有の生物的特性にあるという仮説を、世界各地の古代遺跡や土器文化の変遷から読み解く刺激的な内容です。動植物が生存本能として備える装飾性に「美の原初のかたち」を見いだす視点や、「社会が美を生んだ」のではなく「美が社会を動かした」という発想が新鮮でした。本能的に心地よいと感じる物や空間に関心を持ってきた自分にとって、その源泉をホモ・サピエンスにまで遡る示唆に満ちた一冊です。
日本ならではの美しい色名や古代人の美意識への考察には、思わず好奇心が掻き立てられますね。そして、宇宙物理学者の佐治晴夫さんの本は、美しい文章に引き込まれてつい時間を忘れてしまうほど。こちらの3冊のほかにも、この機会だからこそ出会える1冊との巡り逢いがきっとあるはず。東山本店の階段を上がった2階の客室では、選書された約40冊の本を手にとって、じっくりと楽しめる期間限定の貸切図書室を開いております。完全貸切制となりますので、どうぞごゆっくりおくつろぎください。

スキンケアブランドと本。一見、直接的なつながりはないように思えるかもしれません。朝と夜の1日2回。自らの手で肌を慈しむスキンケアの時間は、小さな積み重ねが肌を育てていく静かな営みでもあります。本を読むという行為もまた、日々の暮らしのなかで、 ふと出会った言葉がやがて蓄積して、気づけば”自分”という輪郭を少しずつ浮かび上がらせてくれるものではないでしょうか。スキンケアと読書。どちらも日常に欠かせない、かつ誰にも干渉されたくない「自分のための時間」なのかもしれません。
8月1日より東山本店のカフェでは、京都の和菓子屋・御菓子丸さんによる新しいお菓子のご提供も始まります。FASの発酵液の原料と同じ黒米を使ったお菓子です。この機会にみなさまにお会いできることを心よりお待ちしております。

概要
・日程:2025年7月24日(木)〜8月17日(日)
・場所:FAS京都東山本店
〒606-8431
京都府京都市左京区鹿ヶ谷下宮ノ前町3
・時間:平日(火・水定休) ①11:30〜 ②14:00〜/土日 ①11:00〜 ②13:30〜 ③16:00〜
・選書展示:約40冊
・参加費:無料
・参加方法
混雑を避け、ゆったり過ごしていただきたいとの想いから、完全予約制とさせていただきます。FAS公式LINEよりご予約をお願いいたします。
*予約受付期間:2025年7月1日〜ご来店の2日前まで
<注意事項>
・FAS公式LINEの予約システムを利用するため、スマートフォンからのアクセスをお願いいたします。
・一度のお申し込みでのご参加は2名までとさせていただきます。
・ご滞在時間は1回2時間までとさせていただきます。