FASのものづくりは、いつも「自然」との対話から始まります。黒米や黒豆など、素材と真摯に向き合いながら、わたしたちはこれまでも自然が肌に恵んでくれる“力”を探し続けてきました。そして今回もまたひとつ、大切な出合いがありました。FASの始まりの地ともいえる京都の一角に佇む本店。その店先からふと見上げると、そこには静かにそびえる大文字山があります。そんな里山の中にひっそりと立っていたくぬぎの木。今回はそんなくぬぎが恵んでくれた酵母のお話を。

はじまりは、ひとつの探求心
肌だけではなく心にも寄り添うようなスキンケアを届けたい。美しい自然の恵みを大切に、その力を最大限に活かしたエイジングケアにこれまでも向き合ってきたFAS。そんな中、大人の目元に力強く寄り添うアイケアを模索して行きついたのが、FAS本店の裏手からほどなくしてたどり着く、大文字山のふもとにひっそりと自生していたくぬぎの木でした。 このくぬぎから取れた酵母との出合いこそが、今回の物語の始まりです。
京都でつながる縁
大文字山ではスギやヒノキの植林が進み、自然のまま残されたくぬぎはごくわずか。今ではすっかり少なくなったその存在が、かつての里山の風景を静かに伝えてくれます。そんな希少なくぬぎの木と、FASの故郷である京都という土地で出合えたこと。それはどこか深く導かれたような出合いだったのかもしれません。 くぬぎの木は、夏になると樹液をたっぷりと分泌します。 その甘い香りに誘われて、カブトムシやクワガタが森の木々に集まる光景を覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。昆虫たちが吸い寄せられるその樹液には、目には見えない小さな発酵の担い手も潜んでいます。 昆虫たちの体を通して、木から木へと運ばれてやってくるもの——それが「酵母」です。 こうして運ばれた酵母は木に定着し、やがてくぬぎの木は多種多様な酵母が息づく小さな生態系になります。その多様な命の中から、わたしたちは高いポテンシャルを秘めた、たったひとつの奇跡的な酵母と出会うことができました。

静かなる生命力の可能性
酵母は古くから人々の暮らしを支えてきた存在です。その営みは目には見えませんが、発酵という不思議な力によって、素材に命を吹き込み、生活に多くのものをもたらしてきました。このくぬぎ由来の酵母もまた、もともとは龍谷大学によってパン作りのために研究されていたもの。食べものに使われることを前提に選ばれた酵母だからこそ、肌に触れる素材としても安心して向き合える、そんな信頼感がありました。酵母は貴重な知的資源の1つであり、通常は外部への提供が非常に限定的ですが、同大学の協力により化粧品原料としての応用が実現することとなりました。

隠された力を見つける
この酵母は、各地から集めた400以上の素材から抽出した約1,000株の中から、発酵力と安定性に優れたひと株として選ばれたものです。移ろう環境の中で、しなやかに根を張り、樹液を分泌し、多様な生命を支え続けてきたくぬぎの木のたくましい生命力は、そこに棲んでいた酵母にも確かに受け継がれていました。耐糖性、乾燥耐性、冷凍耐性など5項目にわたる評価を行う「発酵オリンピック」と称される試験において、優れた能力を持つこの株の最大の特徴は、なんといってもその高い増殖力です。
受け継がれたちから
わたしたちはその力を丁寧に引き出し、増殖させた後、精製してエキス化することでひとつの素材に仕上げました。それが、京都産くぬぎ酵母エキスです。FASの新製品のアイクリームにキー成分として配合されています。目元にふっくらとしたハリと、奥から支えられるような安定感をもたらすことで、年齢を重ねた肌にも自然な立体感と明るさを感じさせてくれます。

手渡すように受け継いでいくもの
発酵技術や古代米など、古くから受け継がれてきたものに価値を見出し、丁寧に向き合ってきたFAS。そして、里山の中で長い時間をかけて生き続けてきた、くぬぎの木が育んできた酵母。その出会いは、わたしたちが大切にしてきたものづくりの姿勢と、自然が育んできた確かな力とが重なった、ひとつの必然だったように感じています。この小さな出合いが、誰かの肌と心に、そして日々のまなざしを支える目元に、あたたかく寄り添う存在となりますように。