FASの故郷・京丹後にも、そろそろ雪がちらつき始める頃。七十二候では「小雪(しょうせつ)」──本格的な冬の気配を感じる季節です。この時期になると、毎年恒例になりつつある黒米の稲刈りがやってきます。
11月下旬、今年も無事に発酵液の原料となる黒米を収穫しました。より品質の高い黒米をつくりたいという思いから、無農薬・無肥料での栽培に挑戦して二度目の秋。風や雨、太陽、そして土。自然の力にゆだねながら、今年も豊かな稲穂が実りました。
わたしたちは手塩にかけたお米を、贅沢にも化粧品にしていますが、もちろんこの黒米は安心安全で、とっても美味しいんです。 化粧品原料を“食べる”なんて、少し不思議に感じるかもしれません。でも、だからこそ。スキンケアだけでなく、肌にのせているものを体の中からも感じてもらえたら── そんな思いから、FASの黒米を“味わう”新しい取り組みを始めました。
この夏より東山本店では、FASの黒米を使ったお菓子をご用意しています。黒米に新たな物語を吹き込んでくださったのは、京都の和菓子屋「御菓子丸」の店主、杉山早陽子さんです。今回は、黒米から生まれたお菓子「黒い土」のお話を。

味の輪郭を確かめる手
伺ったのは京都にある御菓子丸の和菓子が生まれる工房。蒸し器から立ちのぼる湯気に迎えられ、「黒い土」が形づくられていく様子を見せていただくと、その始まりが“手の確かな感覚”にあることに気づきます。黒い土は、2日間浸水させた後、乾燥させパウダー状にした黒米を蒸し上げた、ふっくらとした餅菓子。米粉に水を加えて混ぜ、生地の具合を確かめる手つきは、まるで土遊びをしているかのよう。「ぎゅっとしたら固まるけど、手でほぐしたらパラパラと粉状に戻る。このくらいがちょうどいい塩梅です」黒豆、黒落花生、燻製したブルーベリー。アントシアニンを豊富に含んだ素材を型に隙間なく敷き詰め、 黒米と交互にミルフィーユのように層を重ねていきます。


いちばん上には、蒸し上がった時にわずかな凹凸が残るよう、手でぎゅっと握った石のような粉の塊をのせていきます。こうすることで、隙間に空気が入って、ふんわりとした食感が生まれます。蒸し上がった表面は菓銘の通り、まるで土のような表情。ゴロゴロとした“石”は、 見た目の陰影をつくるだけでなく、おいしさにも寄与しています。 「まさに“手で食べる”ような感覚です。 手で触っていると、おいしいかどうかがわかります。 お餅のように、直接火を通さないものは特に、この手触りが、口に入れた時の食感にダイレクトに反映されます。 御菓子丸で提供しているお菓子に、宝相華(ほうそうげ)という和三盆の口どけをイメージした焼き菓子がありますが、これはまさに粒子が細かくてさらさらな状態が、すっと消える口どけのよさにつながっていたり。 それを手で判断するんです」

口に入れて味見をしなくても、触った瞬間に分かる。杉山さんにとって“手”は、やわらかさやきめ細かさなど、生地の具合を捉え、食感を見極めるための、鍛えられた感覚器そのもの。お菓子づくりの精度を支える、その確かな“手の感覚”こそ、杉山さんの創作の軸なのだと感じました。
黒い土──菓銘に込めた思い
黒米をパウダー状にしたときの、さらさらとした土のような質感。水を混ぜ合わせるときの、土遊びをしているような手触り。蒸しあがった黒米のふかふかとしたその質感は、京丹後の土を想像させます。「食材の原点は、やはり“土”にあると思います。お米の田んぼも、野菜を育てる畑も、すべては土から生まれます」
──「黒い土」という菓銘には、そんな作物のはじまりへの思いが込められています。




































